漫画「ソムリエール」&オー・ボン・クリマ
最近ワイン漫画「神の雫」について書いていますが、他にもワイン漫画が連載中です。
ソムリエール 1~8巻(続刊)
集英社・ビジネスジャンプ連載。
原作:城アラキ 漫画:松井勝法
ワイン漫画というイメージで見ると、とても可愛い画です。
「あらすじ」
主人公「樹(いつき)カナ」は、幼い頃両親を亡くし、スイスアルプスの麓にある孤児を集めた施設で暮らしている。その施設は、ジョンスミスという、会ったことも無く誰なのかもわからない人物から援助を受けていた。カナはその人物の援助によって大学の醸造科を卒業、施設のファームでワイン作りを行い、フランス語英語が堪能、ワインの深い知識を持っている。
謎の足長おじさんジョンスミス氏より手紙が届く。東京のとあるレストランで働いて欲しい。そうすれば施設の援助は続ける。
カナは東京のレストラン「エスポワール」のフロアで働き始める。かつて天才ソムリエと呼ばれた支配人片瀬の元で、ソムリエール見習いとして。そこに来る一癖ある客たちに、これはというワインを勧める日々。
一話読みきりで一つのエピソード。そこにメインのワインが1本紹介されます。人情話、恋愛話と、なかなか泣かせる話も。けど客はなんか屈折しているんですねえ。
そして、カナちゃん。可愛いのですが強情。ワインのことになるとむきになる。そして、お客様に飲んでもらいたいワインがありますと、頼みもしないワインを飲ませます。そのワインについてうんちく、上から目線の説教と、ちょっとやりすぎなのでは?熱心なのは解りますが、客は引いちゃうよなあ。レストランで若い娘さんに説教されたくないよなあ・・。何故か客は旨いワインとカナの話に感動しますけどね。
カナの亡き父親の謎。ジョンスミス氏は誰なのか?1巻でジョンスミス氏と思われる人物が出てきますが、後に片瀬の本棚から「足長おじさん」の本とカナがニューヨークのジョンスミス氏に宛てたエアメールがあった・・。
各話の終わりに、テーマのワインの詳しい解説が載っていて、ワイン好きには嬉しい限り。また、そのワインも買えそうな価格の物が多いのです。さらには巻末に、話のテーマに沿った用語説明、解説が詳しく書いてありますので、ワインの読み物としても楽しめます。
さて、ではこの漫画に出てきたワインを今夜は1本飲みましょう。
オー・ボン・クリマ ピノ・ノワール サンタ・マリア・ヴァレー 2005年
私は2007年を飲みます。3000円くらい。
カリフォルニアのワインです。ブルゴーニュで使われるぶどうピノノワールの赤ワインです。
ピノノワールはブルゴーニュ以外の場所での栽培、醸造が難しいといわれていますが、カリフォルニアでどうでしょうか?
飲んでみます。
お、いい香り。イチゴの香り。ピノノワールの香りです。
「お・・、おおお・・・。う、旨い。
ブルゴーニュワインの味だ。けどそんなに酸味が来ないし、素晴らしく柔らかい口当たり。口に含むと薄いのに果実の旨味が拡がります。赤果実、サクランボ。渋みも強くなく、余韻も短いながら綺麗に拡がります。
これは飲みやすいし、旨味があります。
30分後。うー、甘い。イチゴのニュアンスが強くなる。酸味、甘み、渋み、苦味のバランスがとても良い。近づきやすい。これは美味しい・・。」ポイント89点。
ソムリエールの4巻の第20話「華やかな味わい」に登場。
この話のあらすじ
旅客機のCA・礼子は仕事に疲れていた。友人カナにレストランの予約とワインを2本オーダーする。「エスポワール」に礼子は妻のある不倫相手と訪れる。カナは2本のカリフォルニアワインを用意した。それをブラインド(ボトルを見せない状態)で飲んでもらう。不倫相手は1本目は強烈に旨いが2本目は平凡だという。しかし、再度飲んでみると、1本目は最初のインパクトが無い、2本目は最初より美味しく感じるという。
1本目はメルヴィル。2本目は今回飲んだオーボンクリマ。
メルヴィルは華やかだが長く付き合うタイプじゃない。オーボンクリマは地味だけどゆっくり良さが伝わる。カナは、メルヴィルは完熟したぶどうから高アルコールのワインを造る。飲むと最初にインパクトが強くコクを感じる。オーボンクリマはアルコール度数を抑えて、食事と楽しめる飲み飽きしないワインを造っているのだと。カナは美味しいワインには畑が幸福であることが必要であるという。礼子は不倫相手との別れを決意する・・。
そんな話ですけど・・。
このオー・ボン・クリマ、「ソムリエール」によると、造っているジム・クレンデネンという人は、以前に書いたことがあるブルゴーニュの神様アンリ・ジャイエが師匠だとか。このボトルは最も安いけどジャイエのスタイルが感じられる・・。おお、これがジャイエスタイルなのか!
どうやらこの人は評論化ウケをするワインが嫌いらしい。
ワイン業界にはロバート・パーカーという評論家がいて、この人が100点満点でつける点数がそのワインの価格や1年間の売り上げを左右するという。
うへえ、物凄い数のワインがあるのにたった一人の点数でワインの評価が決まってまうのか。確かにネットショップを見ると「パーカー92点!」とかそんなのばっかだし。この百点満点採点私も真似してやってますけど、何の影響力も無いよ(笑)。
で、その結果どうなってしまったかというと・・。ワインの造り手たちが、パーカーさんが旨いと思うワインを造るようになってしまった。パーカーさんは一日に何十本ものワインを連続して口に含んでクチュクチュしてぺっと吐き出して○○点・・・。とやるわけです。
だから一口含んだ時にインパクトのある味を目指した。高アルコールで旨味感があって複雑実を与える樽の香りが効いたワインです。1杯目はインパクトがあるが呑み続けると飽きるらしい。このままじゃあ、世界中のワインがその方向の同じ味になってしまう。
このジムさんとかがそれに気が付いて、アルコール度数を抑えて、呑み飽きのしないワインを造った。ブルゴーニュも一時期そういう濃厚なワインを造りましたが、最近は過ちに気が付いて薄くて旨いワイン作りをしているそうです。
オー・ボン・クリマのピノ・ノアールは普及品でも5年間はボトル熟成してから楽しみたい、って書いてあるけど2年目で飲んじゃった。それでも旨いよ、これ。
この漫画、ためになるなあ・・。
では、また。